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富裕層マーケティングビジネス独り言:ミドルネットワースの本格台頭近し

2年ほど前に雑誌寄稿した文を一部改訂して掲載することにしました。海外財産調書、財産債務調書が始まり消費・投資しにくくなっているハイネットワースの代わりに、ミドルネットワースがその不足分を埋めていくだろうというのが当社の長期的な予測です。
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「お金持ち」、「資産家」、「富裕層」。すべて「リッチであること」を別の形で表現する言葉であることに疑いの余地はない。一方で考えたいのが「高収入」という言葉。前述の3つの言葉は所謂「アセット」(すでに保有している「資産」)を表す言葉の概念だが、後者は「フロー」(これから生み出されると想定される「収入」)を表すという点で、通常両者は一般的には意味合い的に同じような概念で使われることが多いが、明らかに似て非なる言葉だ。そもそもの意味が全く違うことはおわかりいただけるだろう。
ところが、現実的には、富裕層マーケティングに取り組んでいる企業の多くが、「アセット」と「フロー」を混同してとらえ、富裕層顧客像を見誤っていることが多い。私の経験からいっても、この言葉の違いは決定的な違いだという認識からスタートしなければ、俗にいう富裕層マーケティングは実行戦術論にうまく落とし込めないはずだ。英語では富裕層のことをHigh Net Worth Individuals(HNWIs)と表記するケースが圧倒的に多く、これを直訳すれば「純資産の高い個人」ということになるので、やはり「富裕層」とは「一定以上の純資産保有者」と考えてマーケットするのが望ましいといえる。
しかし、日本においては「一定以上の純資産」のボーダーラインはいったいどのあたりなのか推測するのがかなり難しいという現実も存在する。そもそも純資産そのものを当人が完全把握できていないケースも多いのではないかとすら感じることもある。それはそれで当然の話で、銀行が顧客の全純資産を把握しているかというとそんなはずはないし(多くの富裕層は口座を国内外に複数持っている)、税理士ですらどちらかと言えば単年度個人決算の代行という意味では「フロー」の把握プラスアルファが普通だからだ。欧米においては「ファミリーオフィス」とよばれる一族の資産管理を税務面、法務面からサポートする組織が数多く存在し、一族の純資産をきちんと把握している。しかしながら日本においては「資産管理会社」は有限会社になっているケースも多く、実態把握は困難を極めると同時に、そのような資産管理会社を設立している一族も実際にはごくわずかというのが私の認識だ。
他方、イギリスのナイトフランク社が実施した定量調査では、約1億円以上の純資産を保有する日本の富裕層人口を165万人程度と推測している。また野村総合研究所が行った定量調査の結果では、同じく約1億円以上の純資産を保有する日本人富裕層世帯を81万世帯程度と推測しており、人数と世帯の差こそあれ、これらの数値は私の長年の富裕層ビジネスの感覚的には「遠からず」の印象を受けることも事実として述べておきたい。ビジネスには定量化して考えることが望ましいことがあることも理解しているつもりだ。それゆえ、この2社の情報が現在の日本の富裕層マーケットの規模を表していると言っても問題ないと思われる。
我々ルート・アンド・パートナーズ社の富裕層顧客の定量調査では、約50%が未公開企業のビジネスオーナー、という結果となることが多い。逆に言えば、会社という組織のオーナー職にはお金を残しやすい方法論がある、ということも言える。単純に考えても、給与を低くして利益からの配当金として自分個人に還元させることは違法でもなんでもないことで、税率も相当に下がるという結果になる。
もう一つ、日本において極めて特徴的な傾向、それは「中流階級が多い」、というものだ。富裕層をハイネットワースというのであれば、さしずめミドルネットワース、ということになるのだろうか。我々の経験では、この日本の、特に東京圏にお住いのミドルクラスには次のような傾向がある。
1:実はフロー(収入)がかなり多く、よくお金を使う
2:実は純資産で1億円を超える方々も意外といる
3:本人は自分がミドルクラス(あるいは実はハイクラス)にランクされていることに気付いていない
いわゆるプラチナカードや億ション、高級車販売といった富裕層向けビジネスと言われているインダストリーの購入者は実はこのミドルネットワース群が過半を占めている、というのが私の偽らざる実感だ。裏を返せば話は極端にシンプルだ。歴史的に富裕層向けのビジネスと呼ばれてきたものは、要するに「金融サービス」以外の何物でもなく、特別な金融サービスのサプライヤーは、この層には見向きもしない傾向があるからだ。
ここに21世紀の富裕層サービスのヒントが隠されている。それは富裕層向けサービスを個人資産の金融的なバランスシートの中で考えるのではなく、個人のライフスタイルバランスシートの側面から捉えて、顧客に最適なサービスラインを提供していくことから始めることだ。当人が望むものを提供しお金を使っていただく、というビジネスのサポーターは社会的にも大きな意味がある。むしろ、「日本に富裕層は何世帯程度存在するか」というマクロデータ的議論そのものは富裕層マーケットを干支1回転みてきた私にはどうしても空虚に映ってしまうのだ。
 
 

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