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富裕層マーケティングビジネス独り言「始まりだした世界の富裕層の新しい投資スタイル」

変わる世界の富裕層投資スタイル。今年上半期に見聞きした大きな変化とは
衝撃的だったトマス・ピケティの「21世紀の資本」から約2年。資産家の資産は減りにくいものだと論じたこの本には賛否両論があるようだが、私自身はこのような定量的なアプローチに関してはあまり興味がない。富裕層個人顧客との対話はほとんどの場合1:1の定性的な会話で始まることがその大きな理由だ。そんな中、2016年になってからニューヨーク、シンガポールで見聞きした「世界の富裕層の投資スタイルの微妙な変化」についてご紹介したい。
ファミリーオフィスという言葉をご存じだろうか。資産家一族の資産防衛のためのチームとでも言えばいいだろうか、弁護士や税理士、そのほかのコンサルタントなどがチームを組み、一族の問題解決に向けて徹底的な手を考える団体、会社、ととらえていただければよいと思う。日本にも資産管理会社というものが存在するがもう少し本格的だ。
今年2月にニューヨークで出会った、あるファミリーオフィスご一族からこんな相談があった。「アジア向けに投資したい枠があるんだが、私の友人が農業で成功しているようなんだ。胡椒とかシナモンとかさ。そう、いわゆる調味料になるやつだね。調味料マーケットのフィージビリティ調査を頼みたいんだ。買収できるような候補があればそれも教えてリストアップしておいてほしい。私の祖先もオリーブオイルで財を成した時期があるからね。農業はふるさとに近いわけだよ」。
また、シンガポールのファミリーオフィス会合で出会ったスコットランド出身の投資家から「ねえねえ、私のまわりで、事業に寄付をするよりも、寄付型の事業をファミリーオフィスの中に組み込む人が増えているのよ。私自身はスコットランドの古い教会を買ってリノベーションして、ハネムーンを教会で!という形でアジアの富裕層に売り込むような寄付型の事業を考えているの。デスティネーションハネムーン、っていうんだってね。ゴルフ場も近くにたくさんあるから日本の富裕層もマーケットしたいのよ、協力してくれない?」
というような申し出を受けた。
この2つの話は、新規事業の相談と捉えれば、ある意味よくある話かもしれない。アイデアがあり資金調達を段階的に実施し事業展開をしていく、という普通の形であれば。ただし、アイデアを持って事業を自分で開始しようとしているファミリーオフィスの話だと捉えると、これらの話はとても珍しいものだ。現在の資産を金融商品に投資して資産保全するというのがファミリーオフィスがファミリーオフィスたる所以だからだ。ハーバードビジネススクールのウィリアム・カー教授はこのような動きを「ベンチャーフィランソロピー」と名付けている。私の事業推進上、世界の富裕層がベンチャーフィランソロピーという考え方を取り入れはじめているのは「定性的な観点から」ほぼ間違いない。
私はこの10年間公益社団法人日本フィランソロピー教会の会報誌にも「富裕層 あ・い・う・え・おの法則」と題した連載をさせていただいている。「愛・運・縁・恩 あいうえお」という副題をつけてあるが、いよいよ世界の富裕層が自分の資産の一部を「事業オーナーになるための投資」に振り向ける時代がやってきた、とみている。金融業界にとっては少し痛手の話になっていく可能性もあるが、その他のほぼすべての産業に善意の富裕層マネーが流れ出す好機だと捉えたほうが建設的だろう。前述の2つの例は、「農業」や「旅行業」に世界の富裕層が「消費者でなく事業オーナーとして参加」するという好機だ。世界には4000のファミリーオフィスが平均100億円の資産を運用しているといわれるが、そのうち5%がこのベンチャーフィランソロピーに向かいだしたら2兆円の新たな資本があらゆる産業で動き出すことになる。なんと痛快な話じゃないか。
私は今の富裕層ビジネスを初めてちょうど10年になるが、世界の富裕層が実施している資産保全のあり方で驚いたのは、財団法人と保険を使って実質的に相続税をなくしてしまう、いや、実は残る財産が相続税を支払っても多くなってしまうような方法論だった。要するに総額2兆円の善意の事業投資が単なる善意で終わってしまっても痛くもかゆくもない、ということだ。もちろん雇用が発生するという意味合いにおいてはどんどん成功していってほしいと思うし、願わくばこの数十倍の規模で「新たな資本」が生まれてきてほしいと思う。
社会的インパクト投資とも言われているようだが、当社のビジネスチャンスのひとつにしたいと考えている。
 
前述した「愛・運・縁・恩 あいうえお」は「愛は運と縁と恩の総和である」というゴロあわせでもあるが、富裕層を富裕層足らしめるこの4つの言葉に異議のある富裕層はほぼいないだろう。そんな彼らが「実は金融資産的には守られた形」で「事業資本投下に積極的になっていく」背景にはこの4つのキーワードがあるはずだ。
「今も昔もお金持ちはお金持ちである」という定量分析を行ったピケティの論に加えるとするならば「お金持ちにはお金持ちのお役目がある」ということが現実的に動き出したことではないだろうか。

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